• 2019.11.06

沖縄県を代表する首里城火災 「桐油」で火勢拡大か!?

 

2019年10月31日未明に、首里城の正殿などが焼失した火災が発生しました。

 

出火前後、正殿1階北東側で大きな光が点滅し、その後煙が出ている様子が防犯カメラに写っていたことが5日、関係者への取材で分かりました。県警は1階が火元とほぼ断定しています。

 

同年4月15日のノートルダム大聖堂火災以降、国は歴史的建造物の防火体制を強化していましたが、1992年に再建された復元建物である首里城は、その対象から漏れていました。

よって屋内にスプリンクラー設備がなく、専門家は不十分さを指摘しています。

そして木造で、赤い塗装に沖縄独特の「桐(とう)油(ゆ)」を使っていることが火の勢いを早めた可能性があります。

消防によると現場は熱放射線(輻射熱 ふくしゃねつ)が強く、離れた所の木材も温度が上がって自然発火したとみられます。

 

 

◆沖縄特有の「桐油」

正殿は深みのある赤色が特徴的です。

桐油(アブラギリの種から採る油)に顔料を混ぜた塗料が使用されていて、実際に守礼門の工事で使用した方がおっしゃっていました。

本土の古い建造物は漆塗りだが、桐油を使うのは沖縄特有だそうです。

あっという間に焼け広がったのは、この油も原因の一つだろう、と指摘していました。

塗装下地の一部には漆も使われています。那覇市消防局の局長は「漆を塗った建物はいったん燃え出すと簡単に消せない」と、火の勢いが持続した要因に挙げていました。

同時に「輻射熱がすごかった。正殿の表で放水していた隊員も二次災害の防止のため後ろに引かせた」と報道陣に説明もしていたそうです。

 

 

◆「スプリンクラーがあれば…」

一方、正殿の屋内にはスプリンクラーがありませんでした。

関係者は、「設置義務はないが沖縄の代表的な建築物なのだから、しっかりした設備があるべきだった」と疑問を呈していました。

建築防火工学が専門の東京理科大の大宮喜文教授も「木造で、しかも壁で仕切られない大きな部屋があり、火災の広がりは早いと考えられる。だが、スプリンクラーがあれば全焼に至らなかった可能性がある」とみています。

復元工事を手掛けた国の国営沖縄記念公園事務所の記録によると、正殿にはホースを引き出して放水する「屋内消火栓」があったようですが、今回のように内部で火災が大きくなった場合は人が入れずに使えなくなります。

また、正殿の火災報知機には空気の熱膨張を感知する「空気管」方式が採用されていました。しかし、景観に配慮して目立たなくする代わりに、反応が遅くなったのではないかとみています。

建物外部には水のカーテンを作って他の建物への延焼を防ぐ「ドレンチャー」があったが、結果として南殿や北殿にも火が回った状況です。

首里城は過去に、1453年・1660年・1709年・1945年の焼失に次いで、歴史上5度目の焼失となりました。

 

 

被害状況

総務省消防庁によると、以下の建屋が焼損したと報告しています。延べ4,800平米が焼失。

 

【全焼】

■正殿

■北殿

■南殿・番所

■書院・鎖之間

■黄金御殿池(奥書院を含む)

■二階御殿

 

【半焼】

■奉神門

 

焼失した建屋内には琉球王国時代からの1500点以上の絵画や漆器などの工芸品も収蔵されていました。正殿に常設の展示品421点が焼失しました。

11月2日、収蔵品のうち、南殿と「寄満」の2収蔵庫は耐火性があり、これらに収蔵されていた史料は防火扉により水濡れの可能性はあるが、焼失を免れていた事が判明。収蔵庫から搬出し状態を確かめている状況です。

 

2収蔵庫には、次を含む1,000点余りの文化財があります。

■黒漆菊花鳥虫七宝繋沈金食籠

■黒漆牡丹七宝繋沈金食籠

■白澤之図

■刀剣「青貝巴紋散合口拵」